2019年10月15日火曜日

"#Metoo"運動のきっかけとなったハーヴェイ・ワインスタインのセクハラ問題記事の裏側を書いた“SHE SAID”を読みました

ナタリー・ポートマンのインスタでこの本が紹介されていたこの本。気になったので調べてみるとハーヴェイ・ワインスタインのセクハラ問題を明らかにした女性記者(Jodi Kantor, Megan Twohey)がその背景を本にしたものだということで読んでみました。この記事をきっかけに"#Metoo"運動が広がったといえばわかる人も多いのではないでしょうか。

普段洋書を読むときは英語なので日本語を読むよりは時間がかかってしまいます。だから面白くないと途中でやめてしまうこともしばしば。しかしながらこの本は早く続きが読みたい!という感じで、やめることができませんでした。読んでて映画を見てる感覚になりました。

- 以下ネタバレになります-

はじめは誰もワインスタインからのセクハラ被害について話そうとしなく、行き止まりのように見えたのが、調査を進めるにつれて明らかになってくる事実に驚愕させられます。ハリウッドにコネがない記者が調査をすすめて最終的にアシュレイ・ジャッドやグウィネス・パルトローからの証言を得ることができたわけですが、仕事に対する姿勢とかもすごいなと感心しました。本の中で出てくるRebecca CorbettというエディターがThe wireを製作したDavid Simonのメンターだった人で、ドラマの最終シーズンの男性の編集者が出てくるのですがそのモデルになった人で実は女性だったと言う点も書かれてて、The wireのファンとしてはニヤリとしてしまいました。それから、記者たちが女優たちに対する印象とかも率直に書いてあってなかなか面白かったです。例えば、「GIRLS/ガールズ」のレナ・ダナムを紹介されたけど、慎重に調査を進めないといけない中、彼女は秘密を守れそうな印象を持ってなかった、などなど。

それにしてもワインスタインの卑劣な手口もびっくりさせられますが、ワインスタインの会社が従業員に対するワインスタインのセクハラ(というかわいせつ)行為を防ぐために全く機能していなかったこともわかります。そして、イスラエルの諜報エージェントを使って、記事が表に出ないように手をうとうとするあたり、もう映画ですよね。
また、フェミニストで女性の人権の弁護士であるLisa Bloomがワインスタイン側についていてそのメールなども暴露されているのも見ものです。
記者たちとハーヴェイが対峙する場面。ハーヴェイからの脅しに対して編集長であるDean Baquetが子供を諭すように言い放つ言葉が痛快すぎて、読みながら声を出して笑ってしまいました。もう、ここも映画でしょって。

それから、この本で感心させられたのは、さすがはジャーナリストだけあって、物事が公平にかかれてるように思えました。例えば、民主党、共和党のどちらの政党にも偏った姿勢で書かれていないという点。「ガラスの天井を破る」として大統領選を戦ったヒラリー・クリントン は女性の味方であるように見えます。しかし、もともと噂にあったセクハラ疑惑のためワインスタインをファンドライザーとして頼るのをやめるように支援団体に忠告してたけど、この問題が公になってから問題にショックを受けたと表明したこと。また、夫のビル・クリントン がセクハラ疑惑が出てきたときに相手女性の汚点を探るために私立探偵を雇ってたこともわかります。

また、女優や元従業員等被害にあった女性たちが自分の名前を公表して記事にするまでの躊躇や恐怖も丁寧に書かれています。そして、彼女たちが勇気を持って公表したことで、世間も反応して、"#Metoo"運動にまで広がっていきました。心理的に公にしたくないセクハラや性暴力の被害にあった人が勇気を持って公表することで、多くの人が被害にあっていたことが明らかになりました。これもこの記事のおかげかなと思います。

"#Metoo"Movementまでに広がってめでたしめでたしじゃなく、未だ解決されていない課題も書かれてたりして、(例えば、どこまでがセクハラなのか?会社でやあ!と触ったらセクハラなのか?といった、境界線を引くのが難しく起こった事実が把握しにくい点)、今後この動きによって、法や会社のコンプライアンスの整備がすすめば良いなと思いました。

久々にであったオススメの一冊です。ぜひ読んで見てください。


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